No.1 時は平安の終わり頃。 内裏の両脇に跪いて座る女房殿お付きの武装武士の一群からは、笑いが起っていた。 「さあ、各々方無事に警護を頼むぞ。天子様の御車は女子のじゃ、女房殿のじゃ。よいな。」 昼日中の門前は乞食や筵のイザリや老婆が座り込んでいたが、一向に驚くでもなく脇に避けた。 同時に大門を待機していた公家達の車が、ぞくぞくと合流して出て来た。 「お待ち下され!すべての車の中をあらためさせてもらうぞ。」 一際背の高い男が、すばやく御簾を跳ね上げると、顎を引き上げ首実検を始めた。 つぎつぎに車を囲み、ついにあの車のところに武者が来た…。 「…いや、ちょっと待て!」
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No.2 「今の一発は女子とは思われぬ…、男が乗っておるに違い無い。中を改めさせてもらおうぞ。」 薄暗い中に長い髪の影が数人浮かんだ。男は軽く中をあらためてから 「…お静かに。」武士が小声で喋った。 そう告げると、武士は外へゆっくり降りた。 「いったいどうした事だ?」鬚の“女房殿”が振り返るように言った。 警護の女装した武士が言った。 「私ではありません!」 おわり |
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