2001/05/15 Tue |
日の出とともに目覚めたココレレは天空に目をやった。2羽のわしが遥か空高く旋回していた。その日が来たことをココレレは知った。冷たい清水で顔を濡らすと、すぐに南へ歩き始めた。
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2001/05/16 Wed |
ココレレに、ずっと遠く強い上昇気流に乗って旋回する2羽のわしは道を、先導していた。
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2001/05/17 Thu |
影は歌った。風のように。るんりらるんりら、るんるんりらり。
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2001/05/22 Tue |
ココレレは、粉屋がくれたひとつぶのコーラの実を手のひらにのせ開いた。するとたちまちにしてあたりは真っ暗やみになった。コーラの実からは金色のまばゆい輝きが四方八方に突き出た。ココレレは驚いて目を輝かせた。色鮮やかにあらゆる場所のあらゆるものが見える。極彩色の出来事は現実の数十倍のリアルさがあった。見ただけですべての実在が見渡せた。それに比べれば、今までの見える木や空は夢の出来事のように思えた。あやしいとこは一片もなかった。これは15年のちのココレレが再び見るものだった。すべてのあらゆるものは見える事自体そのものが無上のよろこびだった。想像を絶する手の内の輝きをココレレは、そうっと閉じた。
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2001/05/24 Thu |
背の高いやせた男が、向こうからバイクでやってくるのが見えた。パイプのように どんどん土煙がこっちにきた。カブだった。ゴーグルのなかの目は動物のようだった。かなりポンコツの カブは銀とチョコレート色のブチもように塗り分けられていた。 バイクに乗ったまま男はココレレに言った。 「おれは迷ってるんだ。出口はどこなんだ?!」 ココレレはゴーグルをのぞきこんで言った。 「出口って?」 男はばかにするように言った。 「この砂漠のだ!」 「知りません。」 ココレレは、またのぞきこむように答えた、今度は反射で水色の地平が見えた。 「おお、すまなかった。おまえのような子供に聞いたのが間違いだった。」 男は、はきすてるように言った。 「おれが何年も出られずにいる出口を、お前が知る由もないな。」男はアクセルを吹かして、ふたたび煙りしか見えなくなった。 男はこのあたりで“さまようブチ犬”と呼ばれてた。それにここは砂漠ではなかった。 |
2001/05/25 Fri |
ココレレはテマの市場をとおりかかった。太鼓や歌が聞こえた。市場の雑踏を、顔がただれたもの、ボロボロのやぶけた服のもの、乞食のようなグリオ集団とすれちがった。この中にしっぽの丸まった黒いサルを連れた男がいた。サルはココレレを見上げ懐かしそうに言った。「サンコニャ!」ココレレは驚いた。不思議な懐かしい思いでむねがいっぱいなった。男はグイとサルの首ひもをひっぱって雑踏に消えて行った。
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2001/05/28 Mon |
ココレレの祖父ジュジュはカラバシ村の呪術師だった。ジュジュはパンロゴドラムの名人でもあった。彼の打ち出すパンロゴはけして速いものではなかったが、あらゆるものの芯に浸透した。その響きは正午の日ざしのように単純で明解だった。ある日、彼はココレレが旅立つ時がきたのを知った。天空の知者のみちびきに従いココレレを出発させた。ジュジュは静かにパンロゴをたたいた。ワシは遥か高い空まで上昇と下降をくりかえすと、スーッと方向をきめた。
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2001/05/30 Wed |
ココレレの双児の兄サンコニャは生きていた。7年間サルのファミリーとして生き、猟師にジャングルで発見された。このニュースを聞いた王族の王女がサンコニャを強引に引き取った。サンコニャには額に鮮やかに勾玉形の朱色のアザがあった。このことが一層王女をその考えにさせた。初めは野性むきだしであったが、12才の今、すずやかな顔には王子の高貴ささえただよっていた。サンコニャはことのほかパンロゴ演奏を好んだ。王族は楽器を禁止されてたが王女の願いで例外扱いであった。しかし、言葉はいぜんしゃべらなかった。
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2001/06/06 Wed |
サンコニャは不思議な能力を持っていた。さまざまな霊を見る事が出来た。見る視点のフォーカスを変えると別のものがダブって見えた。
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2001/06/07 Thu |
サンコニャの目の前に、現実よりも鮮やかにいろんなことが起こった。サンコニャはどちらが今見えてる本当の事だかわからないほどだった。
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2001/06/14 Thu |
(これは物語りですが、いろいろな形をもってこの話の進行と同時に磁石のように吸い寄せられ、集まって来てるものがあります。まったく不思議。ひょっとするとどこかのホントの話しなのかも知れないと思うことが出て来ました。)
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2001/06/15 Fri |
この神聖な女性の目の覚めるような美しさに、ココレレは目を疑った。まわりにいた人々もどよめいた。なんだか、なつかしさが込み上げてココレレは居ても立ってもいられなかった。
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2001/06/28 Thu |
サンコニャはサルのファミリーに7年間すごした経験があった。人がなくしてしまった動物の感が強くはたらいた。この見つめる影が危険でないのはすぐわかった。
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2001/07/10 Tue |
このテマの市場はまつりで大変な賑わいになっていた。地方からたくさんの部族も出て、広場は、野菜やら家畜やら日用品の山の間を荷車やロバが行き交う。その目ぬき道りをハンカチを振る乙女の行進がやって来た。その後ろをドラムバンドが着いて行く。ココレレは自分の目を疑った。その行進の一番後ろに身の丈3メートルもある黒い装束の異様な姿をしたモノが着いて行く。「死に神だ!」ココレレは直感した。見上げた頭巾に隠れた顔はしゃれこうべだった。 手にはギラッと光る大鎌をたずさえ、眼窩は暗黒だった。 ココレレは息を殺して通り過ぎるのを待った。 |
2001/07/11 Wed |
死に神は何かを感じたようだ。一瞬立ち止まって空気の気配を伺うようなしぐさをした。だが、ココレレがそこにいるのは見えないようだった。
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2001/07/12 Thu |
サンコニャは初めて言葉を発した。
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2001/07/13 Fri |
その時、一陣の風とともにどこからともなく猿の群れがサンコニャの周りに現われた。中心には身の丈5メートルは有ろうかとおもえる全身銀毛の猿が現われ一声吠えた。
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2001/07/16 Mon |
「サンコニャは渡せないぞ!」
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2001/07/19 Thu |
ココレレは深いねむりから覚めた。2段ベッドの上段で顔の位置に丸い窓があった。ココレレはおそるおそる覗いた。空を飛行しているようだった。真っ白な雲が横を流れた。
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2001/07/21 Sat |
サンコニャは見回すように振り返り、壁にある大きな絵にくぎずけになった。
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2001/07/23 Mon |
そこに描かれていたのは港の風景だった。 サンコニャは、それをくいいるように眺めた。画中のタイトルリボンに“MELA HERBAR”と読める文字があった。18〜19世紀風の港の風景が細密に描かれあった。大きな風車や、入港する帆船、荷役の船など、で賑わっている港の絵だった。その中で不思議なのは、とてつもなく巨大な外洋帆船がどう見ても空中に浮いているように見える。その他の何隻かも海上から浮いて見える。 その後を目で追うと風景は3人の人物の肖像に変わってた。 |
2001/07/24 Tue |
ココレレ、サンコニャという双児の出会いの運命の輪。それが乙女のダンスを中心に挟んだ“ローター現象”を起こした。そして時空の離れた“メラの港”のポラリスエネルギーと共振した。 はては“テマの市場”と“メラの港”という共振が生じている町をとてつもなく大きく揺さぶった。 なんとも不思議なことが起り始めていた....。 |