数奇のパンロゴ ポラリス編


2001/06/20 Wed

 アクラから程近い海岸の町ヌンガ。パンロゴは、ここの町の生まれだ。ビ−チ近くの風の涼しい椰子の木陰は好きな場所。午前中から昼まで、よくここでパンロゴをたたいた。海辺の町特有の時間を止める日ざしと濃い影で、正午になると人陰はみられなくなる。
 ここでは、時間があるのというのは幻想かと思われてくる。

 

2001/06/20 Wed

 浜の長椅子にころがって午後の昼寝をしているときに、見たこともない大波があらわれた。あれよと言う間にパンロゴはさらわれ、気がついたときは速い潮の流れにのって沖合いに流されていた。幸い軽い太鼓のからだ、沈むことはなかった。体の中がくすぐったい。見ると魚が遊んでいた。
あっ、と言う間もなく1週間がすぎ、1ヶ月がすぎた。タコの兄弟が住み着いた。すぐ近くに島影が見えたこともあった。パンロゴの潮の流れまかせの漂流が始まった。

 

2001/06/21 Thu

 タコの兄弟の兄はハチロー、弟はスケハチと言った。パンロゴの空洞を住処にしていた。
 漂流てのはおもしろいもんで、広い海なのにだんだん集まって来るもんがある。難破した帆船のマストやら漁船の流れてしまった浮子やらだ。その下にプランクトンが集まり、魚が群れをなす。すると大形の魚たちもそれをよりしろにする。信じられないような大きさのうみがめが下を通過したりする。これを渡りの途中の鳥が見つけ羽を休めたりする。
 パンロゴは気が着いた。海こそが、この星をおおっていたのだ。
 漂流はコロニーのような状態になっていた。

 漂い漂いの日々、あるときパンロゴを我が家とかまえるタコのハチローは、ふと空をみあげ自分も飛べる気になった。ハチローはおもいっきり8本の足で水圧をしぼり、水を吹いた。なんとこいつ、海面を蹴って20メートル近いジャンプをした。なんだ、まがいなりにも飛べるぞ!
しかし、その飛び方は滑稽だ。まさに空気を抜いた風船そのものがジャンプして落ちて来る。これを見たスケハチはすぐにそれをマスターした。
 少し離れてみるとパンロゴがお手玉をやってるように見えた。

 

2001/06/25 Mon

 1時の方角に、30メートルほど飛び上がったスケハチが波間にチラリとマストの浮き沈みするのを見た。帆船はしばらくすると目の前にこ山のように現われた。

 おお!?マストの先にはどくろがはためいていた。

 

2001/06/25 Mon

 海賊船だ〜!パンロゴは声をふりしぼって助けを求めた。『お〜い、わたしはココよ〜!』ワッチをしていた頭がケンテ柄の海賊かぶり、ヒゲ面の男が、ニコニコ笑いながらパンロゴをあっという間に引き上げた。その作業の手際はすばやかった。その男は黒人で名は“マッチョ”と言う名だった。男はニヤニヤしながら言った。

 「ハ〜イ、ゲンキ?」

2001/06/26 Tue

 その他に、やはりアクラ人で、上の前歯が1本カケて愛嬌のある“テテ”、それからギョロ目で黒、黄色のストライプのシャツの似合うセイロン人の“ペレイラ”。みんなひとくせありそうな連中が、ニヤニヤしながら船首の甲板にパンロゴを出迎えた。パンロゴを太鼓と見てみんなあいそをくずしているのだ。これはなにか始まる予感だ。
 「わおお、なつかしいネ〜ェ!パンロゴォ?!」
 テテが歯のすきまをスースーさせながら叫んだ。

 

2001/06/26 Tue

 あたりを闇がつつみ始めていた。船はおだやかに上下していた。パンロゴをあたためるためマッチョは焚き火を焚いた。とりかこむ顔、海賊のヒゲ面がならんでなんともいえない陰影をつくってた。
 「ニャハハハァ!ようし!おめえらルーレットで決めるぞ〜ぉ!」
 船長らしき男が言った。この男、背は低いが長老格で白いヒゲにキャプテンハットを正面に高々とかぶり、右目を黒の遮眼帯でかくし、左目は炎のように燃えてた。
 この男こそがその名もとどろく“キャプテン・マスター・オブレンテー”だ!

 

2001/06/28 Thu

 マスター・オブレンテーは、ニッカり笑うと長身のコルト45を懐から取り出した。6連倉のリボルバーから弾をトンと抜き去り1発だけ再びこめた。そのリボルバーをカラリと回転させて樽の上に置いた。
 「さあ、てめえら!勇気のあるやつからたたいてイイぞ〜ぅ!」
 帆船の前甲板はそのころ人でうまっていた。『うお〜?!』、どよめく声が上がった。マッチョ、とテテの手がサッと伸びた。がマッチョが一瞬速くコルトを手にした。ニッと笑うや、すかさずこめかみに当て思いきりよく引き金を引いた。
 勢いよく撃鉄が落ちた。

 

2001/06/29 Fri

 “ガチッ!”
 「ハズレだ!」
 銃口はマッチョのこめかみに丸い押し当てた跡を残した。マッチョは一瞬天を仰いでおおきく息をはいたあとあいかわらずニタニタしてなにごともない。
 コルトはテテに渡された。テテもニヤニヤしながら手のひらで弾倉をカラッとさせると、いきなり引き金を引いた。“ズドーン!”

 弾が発射され青黒い闇からなにかが甲板にドスンと落ちた。焚き火の横に、全身黒ずくめの小男がうずくまっていた。あたりは大騒ぎとなった。
 マスター・オブレンテーが叫んだ。
 「こいつは西インド会社のまわしもんだ!?」
 「ずっとねらわれてたよ。キャプテン」
 ニヤついて前歯のヌケたテテが言った。

 

2001/07/02 Mon

 振り返りざま、テテはどこに隠し持っていたのかアフリカンベルをたたき始めた。“パパパティパパ/パパパティパパ”。お、このリズムは“フメフメ”!

 2巡目のベルで、はやくもマッチョはパンロゴをひっ掴むと、やおら膝にはさんだ。ミドルドラムのフレーズ、“ケンケンパ/シケレンパ”を切り込むように入れてきた。
 キャプテン・マスター・オブレンテーは自分の太鼓オブレンテをすばやく寄せた。ロードラムのフレーズ“ディンパタ/ディンパタ”と櫓を漕ぐようなイイ調子で3巡目で入った。
 これを聞いたテテは歌い始めた。そしてペレイラがおくればせながらジェンベで軽やかなソロフレーズをそこに乗せた。
 ありゃりゃ?!
 あのタコのハチロー、スケハチのタコ踊りは言うに及ばず なんとなんと、乗り組み員のすべてが踊り始めたではないか。

 おお!海賊のフメフメだ〜!フメフメのえもいわれぬアンサンブルと踊りとともに、洋々と海賊船は暗い海を切り裂き闇に向かった。
 彼等にはこの後、実に不思議な冒険が待ち構えていた。

 

2001/07/03 Tue

 一夜明けた海賊船エンタ−プライズ号は快晴のカリブ海をすべるように走っていた。

 海賊船とはいっても、一方的な取り引きで行き過ぎたヨーロッパの西インド会社のやり方、ケツの穴まで引き抜いて行くような汚いやり方から積み荷を横取りして、やつらのごう慢さに鉄槌をあたえていたので、エンタ−プライズ号は何処の港に寄港しても人気の的だった。
 物資の補給には困ることはなかった。
 エンタープライズは奪った品物を安い値で流した。
 西インド会社がただ同然で搾取したコ−ヒ−豆や香辛料は、アメリカの商社に売り捌いた。
 さきざきの港はエンタープライズ号の落とす金で潤っていた。
 怒り狂った西インド会社はエンタ−プライズ号のキャプテン、マスター・オブレンテーを目の敵にした。
 躍起になって大勢の殺し屋をそこここに送り込んで来たのだ。

 

2001/07/04 Wed

 キャプテン・マスター・オブレンテーの身辺は謎だった。トリニダード・トバコの生まれという他は、なにも知られていなかった。だが銃の腕前は海賊仲間では伝説だった。50メ−トル離れた頭の上のリンゴのど真ん中を打ち抜けた。いやそれだけじゃない。愛用のコルト45、7.5インチの長い銃口から1秒間に3発正確に的に当てることが出来た。
 しかも自分から先に抜いたことは一度もなかった。
 口を開けばホラと冗談しか言わない。ブッとんだオヤジだ。

 

2001/07/05 Thu

 雲一つない空、航海は平穏だった。
 後部甲板の寝椅子で昼寝中のマスター・オブレンテーが、何を思ったか急に歌い始めた。
 「西インド会社のみなさ〜ん!わ〜たしにご用の方は〜顔を洗って出直してくださ〜い。」
 ニタニタしながらオペラの一場面のように、クルッとマストを回りながらナイフをやおら樽の物影に投げた。またもや長身の男が踊り出て、そのまま海に飛び込んだ。

 

2001/07/05 Thu

 マストのてっぺんから真下を見ると、船が信じられないほど小さく見える。帆船エンタ−プライズ号の舳先には、イルカの群れが見え隠れして行く先を案内している。パンロゴはここから12時の方角に島影を発見した。島影はグングン近付いて来た。いつの間にか目の前に港が展開していた。と見る間に、荷を吃水ぎりぎりに積んだ小舟が、ドッと7〜8艘エンタ−プライズ号をめざして寄ってきた。「ハ〜イ!アッチョンブリケ!?」

 

2001/07/06 Fri

 なにを言ってるかわからない叫びとも、怒鳴り声ともつかない交渉する声があちらこちらから聞こえて来た。満載している積み荷は麻袋いっぱいの鉱石だ?
 「この島にゃ不思議な石がとれるんだよ」 マッチョが八の字眉にして言った。
 「宝石?」
 パンロゴが聞き返した。
 「あ〜、違う。この石は“ポラリス”と言って“震える石”だよ。」
 「そう、オブレンテーさ。どうするんだか...。なんでも誰かに頼まれてるらしいんだな。」
 それはダークグリーンのガラスのかけらのようなモノだった。

 

2001/07/06 Fri

 この石は実に不思議な石でその全貌は謎だらけだ。解ってる働きだけでも驚くべきものがある。ピラミッド型に研摩して先端を北極星に向け、あるリズムを聞かせるとその振動を増幅し始める。
また、あるものにそれをとりつけある歌を歌うと固有振動を高める働きがあり、最悪そのまま行くとそのものを破壊してしまう。
 この石を持ったものどうしの歌、リズムの通信を、地球上何処にいても可能にする。まだまだ解ってない次元を超える旅行のエネルギ−源としても使えるらしい。

 

2001/07/09 Mon

 なーるほど!これで西インド会社がやっきになってるんだな。人類の情報化社会がエネルギー問題なしで出来ちゃうてえことだ...。
 とにかく必要無い人にはまったく必要無い!

 その積み込みが済むと、キャプテンの命令が下り、このままエンタープライズ号は1〜2日湾の沖に停泊することになった。
 警護の見張りを残し、乗り組み員は港町に息抜きの上陸だ!早くも2〜3人が 小船を下ろした。1ヶ月半ぶりの上陸だ〜!
 パンロゴもマッチョ達に同行した。パンロゴはすっかり縞のシャツとバンダナの海賊かぶりが板に着いてきた。そこはメラと言う名前の港町で自由交易の雰囲気にあふれていた。

 

2001/07/10 Tue

 メラの波止場で上陸したエンタ−プライズ号の一行はあっという間に、三々五々町に散っていった。パンロゴ、マッチョ、テテ、ペレイラ、は表道りをぶらぶら歩き始めた。
 はなから港は賑やかなまつりの最中で、ハンカチを振りながら乙女の踊りが行進してきた。あざやかなケンテ柄の色とりどりの民族衣装、あたまには同じ柄がソフトクリームのように渦高くまかれてる。翻る裾からのぞくチョコレート色の肌がまぶしい。
 その後からドラムバンドがゆっくりのビートをたたきだしてる。

 

2001/07/11 Wed

 ハンカチの行進が止まりリズムが変わった。パンロゴのリズミカルなサウンドだ。
 これは放っておけないメンバーが揃っている。

 人ごみをかき分けてドラムバンドに攻め込んだ。マッチョはすかさずパンロゴを膝にはやくもノリノリだあ。テテもバンドのパンロゴをうばった。ペレイラは通行人のジェンベをひったくった。
 ハンカチを振ってた乙女は、輪になって踊り始めた。
 「シピリンピリンパパピンパピン、パピンパパピンパパピンパピン、パンピパパピンパパピンパピン」
 うお〜ぉ! 踊りの輪は幾重にもなって熱狂のるつぼと化した。その中心は真っ赤に発光しているようだった。

 パンロゴが喧噪の中、よく通る声で『サンコニャ』を歌い始めた。
「サンコニャエ〜〜、サンコニャエ〜〜、アメイフォ〜、サンコニャエ〜〜、アオアオ〜〜ヨ〜」 ...どこかから不思議な振動が共振した。
 熱狂の渦の遥か上空に、何かが滑るように飛来したのは誰も気づくよしもなかった。

 

2001/07/12 Thu

 踊りの渦をとりまいていた子供らが一斉に空中を指差し騒ぎだした。ダンスの広場は蜂の巣を突いたような大騒ぎだ。

 ペレイラが目をむき出して言った。『おい、テテ、太鼓やってる場合じゃねえぜ?!』
「ん、ヤベ〜わ。この石のたたりかもしんねえ...。」
 テテはポケットから“震える石”を取り出した。見るとルビーのように異様に発光しながら震えていた。
「うわぁ!なんじゃ〜?!」
 とっさにマッチョに投げ廻した。
「タタタァ!?わっち!どうするんだ。それっ、パンロゴ!」
 石はパンロゴに投げられた。
 広場は水が退くように、見上げる人の輪ができた。そんなまん中、石を廻し続ける海賊連中だった。

 そのあいだも謎の飛行物はゆるやかに降りてきた。
 なんと!巨大な葉巻きのようなものが7つ、この場を目指し降下してきていた。その中のひとつは特に巨大だった。

 ドラムバンドはとうにパンロゴをホッポリ逃げたはずなのに、パンロゴの太鼓のリズムが、徐々に強くなってくる?近付いてそれが巨大な外洋帆船なのが解って来た。
 太鼓はその胴から響いているようだった。

 

2001/07/13 Fri

 降りて来た巨大な外洋帆船は、高い椰子の樹すれすれのとこでピタリと止まった。他の船はもう少し高度をとって止まった。パンロゴの太鼓がエンジンのように低く唸っているのが船底から聞こえてくる。
 そのクッキリした巨大な影のなか、まだ、マッチョ達が廻す真っ赤に発光した石がクルクル廻ってる。その中心に船底から長い階段が下ろされ、滑るように数人の男が降りて来た。
 「はろはろ!」

 

2001/07/16 Mon

「マイネームイズ、クロシオタロー!」
 男はにこやかにうなずきながら、張りのある声で言った。頭にはマゲがノッテる!?
 背中に鶴と亀の派手なマイワイを羽織って地に降り立った。
「わたしはジパングの商人です。わたしたちは、パンロゴパワーの強いエネルギーを感じてチョット降りてきました。サンキューデス!」
「お〜っ?!あなた達ですか?、あのステキなパワーのみなもとは?」
 タローはペレイラに話しかけた。
 しかし、ペレイラはそれどころではなかった。
 このときには、石の廻る速度はもはや尋常ではなかった。
 と、ペレイラはタローに赤く光る石をとっさに投げ廻した。タローはテテに、テテはパンロゴに ...。いつの間にかクロシオタローも、高速で廻る石の仲間になっていた。
 こんなことってアリなの?

 

2001/07/17 Tue
 この輪は一度廻り出すとヌケられないようだ!
 これを見てた、階段にいたクロシオタローの従者がもうひとつ、青い光を発してる石を取り出しタローに投げ入れた。見る間にこれは反対に廻り始めた。すると徐々にスピードはゆるまりタローのところで光りが重なったときに、タローはすばやく袂にしまいこんでしまった。
「なんだかわからな〜い?!」
 タローは両手を広げマジシャンのようにニンマリした。

 海賊供、パンロゴ、マッチョ、テテ、ペレイラは腰が抜けて、その場にすわりこんでしまった。
「どうしちまったんだ?」
 マッチョが目玉が落ちそうな顔で言った。
 ひと呼吸おくと、こんだはペレイラが泣きそうになって叫んだ。
 「わわわっ!船が浮いてる?!」
2001/07/18 Wed

「え?こいつはさっきから浮いてるぜ?!」
 タローの出て来た船を指差しテテが言った。
 ペレイラはつばを呑み込んで港の方を指差した。
「あ、あっちだ、あっち...!」
 椰子の間からおだやかな港の沖に停泊中のエンタープライズ号が水面から浮き上がっているのが眺められた。

 そこにタローが口を挟んだ。
「今さっきの“ポラリス”の“ローター”で共振したんですな〜。船は浮いた方がよろしい。」
「ポラリスのローター??!」海賊みんなが口をそろえた。
「さっきの異様なゲームですよ。このまま2〜3ヶ月はうきつづけるでしょ。」
 タローは得意げに解説した。
 それによれば、ポラリスエネルギーを共振させるには、赤い発光の石と、青い発光の石を、反対回しに同期させるということらしい。

 タローが言った「コントロールはパンロゴでできるんですな。」

 

2001/07/19 Thu

 クロシオタローの巨大外洋帆船の胴から、低く唸って響いてきていたのは、やはりパンロゴだったのだ。
「コントロールは、パンロゴがたたければ簡単なのですな。」
 タローは説明を続けた。
「もっとも、ワタシはできませんが。」

 説明によると、たたきながらノリを速めたり、旋回したければその側を意識したコントロールをすると、思いどうりのラインで飛行するらしい。勿論、着地、アイドリングなど連続コントロールも、すべてパンロゴで出来るらしい。

 タローはつづけた。
「特別な歌を歌うと“異世界”へ航行もできるのですなあ、これが。」
「異世界航行?!」
 海賊たちは口をそろえて言った。
「なんだかわからな〜い!?へへへ...判ったような事言ってますが、まだまだわからないことのほうが多いんですわ。」
 タローは大きく息を吸いながら1人でうなずいた。
 従者があいづちを入れた。
「でも、パンロゴのいいトーンが出ないと反応もしませんやね...。」
「俺にまかせろっ!」
 マッチョが突然言った。

 

2001/07/23 Mon

 すぐさまマッチョは“ダンダダン、ダンダダン”とパンロゴと組んで、イントロをたたき始めた。
 すると急に緑色の光線にあたりはつつまれた。

 ペレイラ、テテ、は早くも手が動いてジェンベとパンロゴを膝に、目を合わせ笑っていた。
 同じ海賊仲間で、一癖有りそうな連中も加わった。赤いベレーをかぶり上半身裸の“ロロ”、顔中ヒゲ面でいつも葉巻きをくわえている“モコ”の兄弟もベル、シェケレで加わってた。

 クロシオタローは船の階段から満面の笑みをたたえて、この光景にうなずいていた。
 緑色の光線は徐々に光を増し、この一団をタローの巨大外洋帆船の中にまるごと浮かび上げ、呑みこんだ。

 

2001/07/24 Tue

 クロシオタローの巨大外洋帆船“グレ−トアンビシャス号”のコントロールルーム。
そこは操縦席と呼ぶにはあまりにもかけ離れていた。リゾートのレストランと展望台を一緒にしたような、不思議な見晴しの良さと、快適さを持った場所だった。マッチョやテテはイスにくつろいでパンロゴをたたく事が出来た。微妙なノリのコントロールまでグレ−トアンビシャス号の航行は反影できた。

「こいつはスゲーな!」
 マッチョが目を輝かせた。
「おお、さすがパンロゴの音色からして違いますなあ。」
 タローは腕組みをしたままうなずいた。
「ついいままでは、このオオカミ男がコントロールしてたのですよ。」
「こいつはなかなかパンロゴがたたけるのです。あ、名前は“ロフロンジ”と言います。顔は恐いがなかなか紳士ですよ。」
「まあ、それでも海面すれすれを飛ぶのがやっとでしたなあ。」

 

2001/07/24 Tue

 グレートアンビシャス号の内部は高級部材をふんだんに使った豪華船のようでさしずめ動くホテルと呼んだほうがよさそうだった。いったいどれだけの部屋があり、この中にどれだけの人が居るのか見当がつかないぐらいの巨大さだった。

 マッチョが軽く腕慣らしでパンロゴをたたいた。
「ピンパピンパピンパ/シピリンピリンパ/ストトントン」
 コントロールルームの巨大な窓に、目の前に地球の丸い稜線が美しく輝いてるのが、手に取れるほどの感じで出現した。
「うお〜っ?!」
 ル−ムにいた一同からどよめきと歓声が上がった。
 窓の外を滑るように稜線が動いたが、不自然な加速度はまったくなかった....。

 

 物語は、シンクロ編につづく。

 

戻る